商品は、食パンとロールパンだけ。それでも行列ができ、昼には売り切れる店。
それが浅草寿町にあるパンのペリカンだ。
ペリカンのパンについては、いろいろな人がいろいろな表現をしているが、まずは食べてみることだ。
口に入った瞬間、「いつも食べているパンとは違う!」と思うはずである。―そんな感覚を持つのがペリカンのパンなのである!
なぜ食パンとロールパンだけの店となったかは、二代目店主である渡辺多夫(かずお)氏のポリシー、ペリカンが業務用パンだったことと深く関わっている。
ところが、である。
最近、パンのペリカン4代目店主である渡辺陸氏が書いた本を見つけた。
この本の構成は下記のようになっている。
第1章 不思議なパン屋
第2章 ペリカンの歴史
第3章 おいしさのひみつ
第4章 浅草とパン
第5章 100歳のペリカン
第6章 ペリカンとわたし
第7章 ペリカンを食べる
この本には、浅草ファンにはたまらない発見がある。
ペリカンのケーキ店が千葉の松戸に3店舗あったこと
浅草のオレンジ通りと雷門仲通りにあったケーキ店「ミカワヤ」とペリカンは、なんと親戚同士だったこと
ペリカンのパン粉は、とんかつで有名な「すぎ田」で使われていること
昔、赤坂にあったレストランシアター「ミカド」で使われていたこと……を知る。
著者は、「器用さと丁寧さ」の中で、
「効率と丁寧さだと、丁寧さのほうが大切だと思っています。
効率のよさは指摘すればどうにかなります。効率のよさを教えるのは簡単です。
でも丁寧さというのはなかなか説明しづらい」と述べている。
いま、世の中は、効率を追い求めていることに終始している、その中にあって、丁寧さを追求していることが、ペリカンのパンの秘密かもしれない。
『パンのペリカンのはなし』から
心に残り続ける昭和のおかあさん
『浅草のおかあさん』