八百屋さんや、酒屋さんなどの店頭に黙って立っていた少年たちは、やがて、仲間の店員たちとふざけながら立つようになる。
だいぶ威勢のいい言葉も飛び出てくる。
そんな店員たちの前を、「浅草のおかあさん」が「あらあら、みなさんお揃いね」と言って通ると、店員たちはふざけるをやめ頭をかく。
そうすると、みんな浅草に来たときの顔に戻る。
彼らは、三社祭のときには町内名が書かれた駒札を背にした半纏を着込み、神輿の貴重な担ぎ手となる。
本社神輿が町内に渡御するときには、他の担ぎ手に、「バカヤロー。そんな心持ちじゃ西部町会や東部町会の奴らに負けるぞ!」と気合いを入れるまでになる。
彼らは店の娘と所帯を持つこともあった。
浅草のおかあさんは、娘が抱く赤ん坊をのぞき込み、「あらあら、おとうさん、おかあさんにそっくりね」と語りかける。
赤ん坊の顔には、少年が地方から出てきたときの顔、娘が小さかったときの顔が浮かんでいる。
『浅草のおかあさん』
第22話 「浅草のおかあさん」の喜び から
心に残り続ける昭和のおかあさん
『浅草のおかあさん』
第22話 「浅草のおかあさん」の喜び