第25話 お手伝いさんの気持ちが詰まっている焼きいも

二階で試験勉強をしていると、「やーきいも いしやーきいも やきたて」という声が聞こえてきた。
石焼きいもの声は、ふけゆく路地のさびしさを感じさせる。
すると、一階の居間から、おかあさんとお手伝いさんが「買おうか?」と相談している声がもれてくる。
しばらくすると、外にサンダルの音が響いた。
その音を聞きつけてか、前の家からも隣の家からもサンダルの音が聞こえてきた。

 

考えてみれば、おかあさんは、いつもお手伝いさんと相談しながら食料品や物を買っていた。
お手伝いさんたちは、おかあさんたちの参謀役でもあったのだ。
物を買って食べるときだけでなく、食事も一緒だった。
そればかりでない。お手伝いさんとは、喜びも悲しみも、怒りも涙も共有したように思う。

 

よその子供からいじめられると、お手伝いさんは憤った。学校で先生にほめられると、自分のことのように喜んでくれた。悔し涙を浮かべると、お手伝いさんまで唇をかみしめた。
血を分けた人でもないのに、その関係はいったいなんだったのだろうか?
お手伝いさんの楽しみは、なんだったのだろうか。
まさか、私たちと「少年サンデー」や「少年マガジン」を回し読みしたことではなかったはずだ。

 

浅草のおかあさん
第25話 お手伝いさんの気持ちが詰まっている焼きいも から

 

石焼きいもの声は、ふけゆく路地のさびしさを感じさせる。

 

心に残り続ける昭和のおかあさん
浅草のおかあさん

本の目次

スマホで読む方法

第25話 お手伝いさんの気持ちが詰まっている焼きいも
トップへ戻る