「浅草」の名が付いた映画を観たい人は、昔の浅草の姿を知りたいからだと思う。
だが、「浅草」の名が付いた映画は意外なほど少ない。
ここでは3本の映画を紹介したい。
昔の浅草を知るうえで、おすすめしたいのは『浅草紅団』だ。
1952年製作なので、終戦後の浅草の姿を知ることができる。
戦前の浅草を知るなら、『浅草の灯 踊子物語』をおすすめしたい。
大正中期~昭和の初めの浅草オペラ全盛時代をセットで再現している。
『浅草の夜』からは昭和20年代後半の浅草の街の様子が窺われる。
浅草の昔の姿を知るという観点から3本の映画を見ていきたい。
『浅草紅団』
1952年大映 DVD販売はKADOKAWA(モノクロ)
監督:久松静児
出演:京 マチ子 乙羽信子 斎藤紫香 根上 淳
原作:川端康成
川端康成の原作とはかなり異なるが、終戦後まもなくの浅草を知るうえで、貴重な映画だ。
● この映画からわかること
・浅草寺本堂が戦災より復旧していなかった。(本堂が再建されたのは昭和33年)
・六区の劇場では楽団がまだ前方席に陣取っていた。
・六区は戦前の盛況を引き継ぎ、活況
・映画のシーンで松屋デパートの屋上から浅草の街を眺望するシーンがあるが、この眺望こそが当時の浅草そのものである。
・伝法院がシーンの一つとなっていた。
『浅草の灯 踊子物語』
Amazon prime videoでも見ることができる。
画像はAmazonのページからお借りしました。
1964年 日活(カラー)
監督: 斎藤武市
出演 :吉永小百合, 浜田光夫, 二谷英明
● この映画の魅力
・大正中期~昭和のはじめの浅草オペラ全盛時代を再現したこと(浅草オペラファンにはたまらない一作)
浅草凌雲閣(12階)、ペラゴロ、ペラゴロが集う藤棚までもセット。象潟 (ひさかた)警察署、「ベアトリ姐ちゃん」の歌声も聞けるシーンも有り。
浅草オペラの紹介本には女優たちの着物姿も載っているが、舞台外では着物を着ていたことが、この映画からもわかる。
浅草公園を「エンコ」と呼んでいたことがわかる。
・吉永小百合がオペラ女優の玉子役を演じていること
・浅草オペラを「手っ取り早く、新しいもの」と表現するシーンが印象に残る。
・象潟 (ひさかた)警察署のシーンも出て来る。
なお、主人公の一人であるオペラ俳優山上七郎は、オペラ俳優藤村悟朗がモデルだったと言われている。
『浅草の灯』は1937年(昭和12年)にも、上原謙 、高峰三枝子 主演で映画になっている。
『浅草の夜』
1954年 大映 DVD販売はKADOKAWA(モノクロ)
浅草の劇場の踊り子や作家を中心として繰りひろげられる物語
監督 脚本:島耕二
出演 :京マチ子, 鶴田浩二, 若尾文子, 根上淳, 志村喬
原作:川口松太郎
● 映画に出て来る浅草の店
元祖 釜めし春(看板)酒の店 松風(看板) 鮒忠(ポスター)
● 光景
隅田川(橋・船・釣り) 松屋デパート 六区 仁丹塔もうっすらと見える。
浅草と隅田川の深い結びつきを感じる。
心に残り続ける昭和のおかあさん
『浅草のおかあさん』