浅草のおかあさん

第4話 先生を自慢しあうおかあさんたち

浅草にいるおかあさんたちをつくづく誇りに思うときがある。
おかあさんたちが、子供の先生を自慢しあうのを、聞くときだ。
浅草のことだから、先生のことをサルだとか、カバに似ているなんてことは言う。
だが、先生のことをけっして悪く言わない。競ってほめあう。横で聞いていると、なんだかうれしくなってくる。

 

「浅草のおかあさん」が雷門通りに面した精肉店の「松喜」の角あたりで、「あら、先生」とほほ笑んで、下校途中の先生に話しかける姿をよく目にした。
男の先生などはちょっと照れた顔をしていたが、ものすごくうれしそうだった。
女性の先生たちは、学生時代の友だちから声をかけられかのように振り向いた。
だが、この光景は浅草の人には意外に映った。
ほかのおかあさんたちは、先生たちのことをいくら自慢するといっても、浅草人特有の気恥ずかしさがあって、声をかけられなかったからだ。
それなのに、いつも控えめな浅草のおかあさんが、どうして声をかけられるのかわからなかった。
先生と話をしている姿にも驚いた。とても先生、生徒の父兄といった関係には見えなかった。
浅草っ子が、初めて「浅草のおかあさん」を知ったのは、きっと、こんなシーンを目にしたときだったと思う。

 

『浅草のおかあさん』目次

 

 

浅草小学校は創立146年を迎えた(2019年)

田原小学校は創立108年を迎えた(2019年)

 

「あら、先生」と話しかける「浅草のおかあさん」を、「松喜」の角で見かけた。

 

 

◆「浅草のおかあさん」と呼ばれた女性の物語

浅草のおかあさん

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第4話 先生を自慢しあうおかあさんたち
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