浅草のおかあさん

第6話 「音のヨーロー堂」

おかあさんたちは、子供たちに無性に習いごとをさせたがった。
おかあさんたちの格好の標的となったのは、いまも健在の「音のヨーロー堂」である。
ヨーロー堂は、「雷門」の大提灯と同じ並びの雷門通り沿いにある。「雷門」の左横手にある「常盤堂雷おこし本舗本店」から数えて六軒目、一つ目の路地にぶつかる角にある。「ちんや」の並びであり、「雷門」の目と鼻の先である。
1階がレコードと楽器売り場、2階におかあさんたちの標的となった音楽教室があった。
ヨーロー堂は大正元年創立だから、浅草のど真ん中で浅草を見守ってきたことになる。
レコードを出した歌手はかならずヨーロー堂に挨拶に来た。

 

ヨーロー堂抜きの浅草など考えられない。
一つにはヨーロー堂が浅草のど真ん中にあることから、自然にヨーロー堂込みの浅草の景色が目に焼き付いてしまっていることがある。
もう一つには、ヨーロー堂で音楽を習ったり、レコードを買ったことが、自分と音楽との出発点になったからである。
演歌歌手にとっても、ヨーロー堂を抜きにした歌手人生は考えられない。デビューしたてのころ、ヨーロー堂の前で必死に自分の曲を披露し、聴衆からレコードを買ってもらったことが歌手人生の原点になっているはずである。

 

『浅草のおかあさん』目次
「ヨーロー堂」は「ちんや」の並びにある。(壁が緑のビル)

 

 

◆「浅草のおかあさん」と呼ばれた女性の物語

浅草のおかあさん

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第6話 「音のヨーロー堂」
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