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第9話 なごりを惜しむ「正華」の餃子

「正華」は「ヨーロー堂」と同じ並びの雷門通り沿いにあった。浅草の人たちは、みんな「正華」と言っていたが、一階の売店の横の壁には「正華飯店」という金文字が光っていた。

「正華」の焼き餃子に特徴があった。「正華」の餃子は肉詰め餃子であり、いま流行りの小籠包のように餃子の中に肉の塊が入っており、かなり大きい餃子だった。

餃子といえば、ひき肉と野菜が刻まれたものだと思い込んで口に入れると、餃子の皮からツルっと肉の塊が飛び出て、訪問客はあわてて水を飲んだ。浅草のおかあさんは、そんな姿を楽しむ茶目っ気もあった。

 

「正華」の餃子はいつからかは定かではないが、中身が肉詰めから、ひき肉と野菜が刻まれたものに変わった。しばらくして、「正華」は浅草から姿を消してしまった。

私は「正華」が忘れられなくて何度もネットで検索した。検索のたびにがっかりしていたが、最近、検索したらヒットした。私は、画面の「『正華』が浅草に戻ってきました!」という文字に見入った。

急いで支度をし、「正華」に向かった。はたして、すしや通りにあった。店の入口正面に「正華飯店浅草直売所」と赤い看板があった。

この赤色は、昔買った餃子の包装紙の色だったことを思い出した。

 

浅草のおかあさん
第9話 なごりを惜しむ「正華」の餃子 から

 

「正華」は、いま、すし屋通りで直売所を出し営業している。

 

地方から来た人は「駒形どぜう」の『丸なべ』に驚いた。

 


昭和の時代から平成にかけて「浅草のおかあさん」と呼ばれた女性がいた。
浅草のおかあさん

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第9話 なごりを惜しむ「正華」の餃子
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