隅田川に架かる橋と川面を見つめた作家は多い。 川面は、見る人により、見る時代によってまったく違って見える。 いまの川面を見つめている人もいれば、過ぎ去った日の川面を見つめている人もいる。 橋の上に立つと、さびしさと切なさ […]
第12話 おかあさんと育てた朝顔
浅草っ子にとっては、三社祭が終わり、五月と六月の最終土日に開かれる「お富士さん」と呼ばれる浅間神社(せんげんじんじゃ)での植木市、七月の九日と十日に観音さまの境内で開かれる「ほおずき市」を迎える季節が一番楽しい季節である […]
第13話 おかあさんとかき氷
おかあさんや子供たち、お手伝いさんが、かき氷を食べているときは、その家のおとうさんの機嫌がいいときである。 浅草のおとうさんたちは気難しかったから、夕食を食べているとき、ちょっとしゃべっただけで手が飛んできた。 いまの時 […]
第14話 浅草の夫婦
浅草の男たちは、店では難しい顔つきをして、店員を叱り飛ばしているくせに、同業者会などのちょっと正式な会に出席すると、普段、着ることもないスーツを身にまとい、借りてきた猫のように席に座っている。 そればかりか、自分の娘の見 […]
第15話 おかあさんたちの夏休みの宿題
夏の最後におかあさんと子供が取り組むものといえば、夏休みの宿題である。 おかあさんたちは、最初は子供と一緒になって、「さあ、よく考えてみて」などと声をかけ問題に取り組もうとする。 しかし、ここは浅草である。おかあさんたち […]
第16話 南天や赤きに集う小鳥かな
学校の俳句の宿題に、この句を頂戴した浅草っ子は多い。この句は作者不詳のまま浅草で広まっていったが、この句の作者は「浅草のおかあさん」である。 「浅草のおかあさん」が作った句をよむと、写実的である。この句の情 […]
第17話 目的が明確なおかあさんたちの旅行
秋ともなれば、おかあさんたちは旅行に行った。 浅草にいるおかあさんたちの旅行は、ちょっと変わっていた。 おかあさんたちにとって、旅行の目的はみやげを買って帰ることにあったから、行き先がどこで、泊まるホテルがどこかなんてい […]
第18話 遠足の切り札「志乃多寿司」
おかあさんたちは、子供が遠足に行くともなれば、「志乃多寿司」に予約をしておき、その日の朝、取りに行った。 「志乃多寿司」は雷門仲通りにあり、いまでも健在である。ラーメンの「馬賊」の向かいといえば、わかる人が多いと思う。 […]
松屋デパート ー 浅草っ子の心のふるさと
浅草っ子にとって、松屋デパートは自分の成長と共にあった。 だから、心のふるさとなのだ。 このことを『浅草のおかあさん』では次のように描写している。 第19話 人生丸抱え「松屋デパート」 から抜粋 子供のころ […]
第20話 『下町の太陽』
エノケンが歌う「渡辺のジュースの素です。もう一杯」という渡辺製菓のテレビコマーシャルが流れていたころ、「下町の空に輝く太陽は~」で始まる倍賞千恵子の『下町の太陽』もよく聞いた。 エノケンのコマーシャルと『下町の太陽』、こ […]